ライブ・ドキュメンタリー
ドキュ・メメントのメイン・イベント、登壇ライブ。
今年は「参加型」をより強く打ち出します。
映像を通して想起したものを語り合い、記録に残す場にする予定です。
1月20日(土)
16:30~ ふくだぺろ
『果たして間に合うのか?』
アフリカの大湖地域に住むトゥワの人たちは元狩猟採集民だ。定住して20年が経つが、いまも狩猟採集的な感情や思考のあり方を維持していて、歌って踊って喧嘩するのが大好きだ。現在ふくだは、そんな彼らと作った映像を編集中である。30分ほどのワークインプログレスの作品を披露したいと思っている。
が、ただし、ドキュメメント本番までに間に合うかはわからない!もし間に合わなかったら過去作を上映する。その場合は、時間経験の溝をピンホールカメラで視覚化した『Sitting, Gazing, Gazed』、フィールド経験について音とイメージが語り合う映像往復詩『Read Letters and Asynchronous Perspectives』などを考えている。
ふくだぺろ
マルチモーダル人類学者、詩人、アーティスト。立命館大学先端総合学術研究科博士課程在籍。アフリカ大湖地域に住む(元)狩猟採集民であるトゥワを/と研究する。論文,映像,詩,写真,小説、スケッチといったメディアを複合的に用いて、現実がいかに創造されるかを探究する。マンチェスタ一国際映画祭2016実験映画賞受賞、『現代詩手帖』新鋭2020選出。
写真:Alexandra Sastrawati
私はこれまで国内外でドキュメンタリーを制作してきたが、様々な問題に直面し限界を感じることが多かった。その中で政治的問題を抱える国のアーティストたちと交流を深め、共同制作をおこない、彼らから多層的なコンセプトの重要性を学んできた。
17:40~ 小鷹拓郎
『センシティブな地域で
作品を制作するには
どうしたらいいのか』
今回上映する二作品は、どちらも台本なしで制作したモキュメンタリー(フィクションをドキュメンタリーのように見せる)作品である。
2017年に石川県珠洲市で制作した短編映画「村にUFOを誘致する」では、原発誘致によって分断されたコミュニティを地元住民らと再築した。
『村にUFOを誘致する』
2021年のコロナ禍に制作した短編映画「インドネシア人技能実習生、河童の狩猟技術を学ぶ」では、差別を受けていた外国人技能実習生らが出演し笑顔を見せる。
社会問題を抱える地域だからこそ活きる手法、新たな表現の可能性について考察していく。
『インドネシア人技能実習生、河童の狩猟技術を学ぶ』
小鷹拓郎(こたか たくろう)
アーティスト、映画監督
国内外で社会の分断を抱えた地域でフィールドワークをおこない、ドキュメンタリーとフィクションを往来するアートフィルムを発表。これまでアジア、中東、アフリカなどで制作。2017年度文化庁新進芸術家海外研修員としてタイで一年活動、2019年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてインドネシアで二年活動。2023年度川村文化芸術振興財団SEA支援助成受賞。約3ヶ月間パプアに滞在し、現地のジャーナリストらのサポートを受けて新作映画を制作。
19:30~ 松井至+佐藤恒平
『つぎの民話
~ドキュメンタリー×地域おこし』
テレビが普及し映像が溢れる前、誰もが全身で語り、聴き、自分達自身の物語と生きていたのではないか?ドキュメンタリーを地域で作り、地域で観ることでそうした語りの場を再生させたいと考え「つぎのみんわ」(次の民話)プロジェクトをはじめました。
2023年夏、福島県西会津町で2本の中編ドキュメンタリーを制作。ひとつは人口およそ550人(50代以下は30人)の奥川地区で人口減少とその対策となる「結」(集落の助け合いの仕組み)の新しい形を描き、ふたつめは地域の産業の中心である「米」をめぐって自然と日本人との関係について掘り下げました。
昨年末、奥川地区で行われた上映会には110人(住民の20%)が集まり、集落の未来について議論が行われた。ドキュメンタリーの社会実装とは何か。その最大値を模索し、報告します。
松井 至(まつい いたる)
1984 年生まれ、東京都出身。映像作家。 「私だけが聴こえる」令和 4 年度文化庁記録映画大賞受賞 。 HOTDOCS 正式招待。品川宿の人物図絵(品川宿まちづくり協議会) 。
佐藤 恒平(さとう こうへい)
1984 年生まれ、「つぎの民話」プロデューサー。地域振興サポー ト会社まよひが企画を創業し、ボードゲームやドキュメンタリー映画を活かした地域振興活動に取り組んでいる。総務省地域力創造アドバイザー。
1月21日(日)
16:30~ アサダワタル
いわき市にある福島県復興公営住宅・下神白(しもかじろ)団地には、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、浪江・双葉・大熊・富岡町から避難してきた方々が暮らしている。
『ラジオ下神白』
あのとき あのまちの音楽から いまここへ
2016年から、まちの思い出と、当時の馴染み深い曲について話を伺い、それをラジオ番組風のCDとして届けてきたプロジェクト「ラジオ下神白」。
2019年には、住民さんの思い出の曲を演奏する「伴奏型支援バンド」を結成。生演奏による歌声喫茶やミュージックビデオの制作など、音楽を通じた、ちょっと変わった被災地支援活動を行ってきた。
支援とは何か? 伴走(奏)するとはどういうことか?「支援する/される」と言い切ることのできない、豊かな関わり合いがある。
そのプロセスを記録した映像から、2023年に映画「ラジオ下神白 あのとき あのまちの音楽から いまここへ」(小森はるか監督)も制作された。
アサダワタル
1979年大阪生まれ。アーティスト、文筆家。自称「文化活動家」。音楽や言葉の力を手がかりに、国内外のさまざまな地域コミュニティでその土地の人と協働するアートプロジェクトを演出。2016年から「ラジオ下神白」をスタート。「音楽と記憶」の関係に着目し、ときに演奏を通じて、ときに研究活動としてケアや災害復興の現場にかかわり続けている。『想起の音楽』(水曜社)、『住み開き増補版』(ちくま文庫)他著書多数。2022年より近畿大学文芸学部教員。
今回はその一部を上映しつつ、本プロジェクトのディレクターを務めてきた文化活動家のアサダワタルと共に、見ること、聴くこと、それを人に届けることの大切さや意味について話し合いたい。
※本日の上映は、監督のご理解を得て、ドキュ・メメントの登壇用に映画の一部を抜粋したものです。
17:40~ 飯田将茂
『在る、或いは休息の可能』
人の背丈ほどの球体関節人形を3人の人形使いが動かす、その様子を撮影しました。モノとしての意志にそぐわない所作が与える命と、その手から離れた瞬間に訪れる休息。
「私たちは死んでいる状態に敵わない」とは人形使いの言葉です。存在を撮影することの役割をこの時の経験から少し話してみようと思います。
飯田 将茂(いいだ まさしげ)
舞踏と映像による団体ユリシーズ代表。プラネタリウムで上映するドーム映像作品の制作や、舞踏公演の演出を行う。主な作品にドーム映像作品『HIRUKO』(主演:最上和子、2019年制作)。
ミャンマーでは、2021年の軍事クーデター以降 、多くのジャーナリストやアーティストが命を奪われ、拘束され、国を追われた。
Docu Athan (ドキュ・アッタン)では、弾圧を逃れながらも制作を続けるミャンマーのクリエイター(映像作家/ジャーナリスト)たちと共に作品を制作している。
故郷を失った制作者たちはどこへ向かうのか。闘争する者、亡命する者、解脱する者。
19:30~ ドキュ・アッタン
(北角裕樹+久保田徹)
『映像作家たちのエレジー』
〜映像が犯罪化された世界から逃れて〜
それぞれの喪失を抱えながらも、制作を続けているミャンマー人たちの姿を写した。彼らのポートレート映像と、彼ら自身が制作した映像作品を交互に上映する。
Docu Athan -ドキュ・アッタン-
2023年2月1日に設立されたオンライン・プラットフォーム。弾圧を逃れながらも制作を続けるミャンマー人たちによる映像作品を掲載。ウェブサイト上では、ミャンマー人クリエイターたちに直接寄付をすることができる。ミャンマーで拘束された経験のある二人の日本人、北角裕樹(ジャーナリスト)と久保田徹(ドキュメンタリー映像作家)によって設立された。同年10月より、一般社団法人Docu Athanとして活動。
久保田徹
1996年生まれ。大学在学中の2014年よりロヒンギャ難民の撮影を開始し、ドキュメンタリー制作を始める。以降、BBC, Al Jazeera,NHK Worldなどにてディレクター、カメラを担当。2022年7月にミャンマーにて撮影中に国軍に拘束され、111日間の拘束期間を経て帰国。
北角裕樹
ジャーナリスト。1975年生まれ。日本経済新聞記者や大阪市立中学校校長を経て、2014年にミャンマーに移住して取材を始める。短編コメディ映画『一杯のモヒンガー』監督。クーデター後の2021年4月に拘束され、一か月間収監。5月に帰国した。