ライブ・ドキュメンタリー(登壇ライブ)
Live Documentary
制作者・出演者・観客が、作品の上映後に車座になって観たものについて意見を交換する、“体験ライブ型”のドキュメンタリー上映です。
今年は「私たちは発光している」というコンセプトを掲げます。映像を通してヒトを見ることで、その存在が光を放っているように感じることがあります。撮り、撮られることで私たちはヒトの見えない光に気づくのかもしれません。
タイムテーブル
1月18日(土)
16:00 開場
16:30 開演
16:45 登壇① 山内 光枝(1時間半)
18:15 交流タイム
19:00 登壇② 河合 宏樹(1時間半)
20:30 交流タイム
21:30 終了
1月19日(日)
13:00 開場
13:30 開演
13:45 登壇④ 米本 直樹(1時間)
15:00 登壇⑤ 村津 蘭(1時間)
16:15 登壇⑥ 関 強(1時間)
17:15 交流
19:30 終了
20:00 打ち上げ(会場:一品楼)
1月18日(土)
16:45~ 山内 光枝
『泡ひとつよりうまれきし』
長崎県・対馬の東海岸にある 曲(まがり)という集落に通っている。 かつて“海女の郷”と呼ばれていたその村で、十数年かけて初めてある肉声に触れた。
その時私は撮影も録音もできなかった。いや、しなかったのだ。本物の声を受け止めるためだけに その場に存在したかったから。
あんたのしていることは「生=実物」ではない。「生=実物」を描いた絵のようなものでしかない。と、そのひとは言った。
映像/作品/表現そのものが、いつしか肉声のように、「生=実物」になることはできるのだろうか。
預かりきれない生のリアリティを、それでも遺そうとする者は、その“声”に、“光”に、何を孕むことができるのだろうか。
日本統治下の釜山に暮らした自身の家族史に向き合うセルフドキュメンタリー『信号波』(2023)と合わせて上映。
山内 光枝(やまうち てるえ)
Yamauchi Terue
1982年福岡県生まれ。2006年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ BA ファインアート卒業。2007年に帰国後、国内外で精力的に制作、発表している。近年は、潜水漁をいとなむ女性など、海を生業の現場とする人々に注目。繰り返し現場を訪れ、出会いや体験から生まれる表現を発表している。
19:00~ 河合 宏樹 ×松井 至
『ライブ映像がライブドキュメンタリーになるには?』
私は音楽のライブを中心に、舞台に上がり”生”で戦う表現者たちを愛し、憧れ、その魅力を伝える為に、彼らを被写体としてカメラを向け続け、その表現を"留め"、映像作品として世に発表することを生業としてきました。
しかしながら、彼らの表現は映像に”映る”ことなく、平面の映像の枠組みをも超えてきます。私はいつも葛藤の連続で、今一度もその瞬間を収め切ったことはないと感じています。
一方で、私は”ライブ”と”ライブ映像”は根本的に違うものだと思っています。映像でしか体感できない、被写体との距離、迫力、時間、物語の力を信じてもいるのです。
自分が抱えてきた映像化への逡巡、生の空気は映像には納められない、けれども、だからこそ、被写体にカメラを向け続ける。
自分はなにを映像化しようとしているのか、自問自答の向こうになにがあるのか、探索する時間を共にしていただけたらと思います。
河合 宏樹(かわい ひろき)
Kawai Hiroki アーティスト、映画監督
学生時代から自主映画を制作し、東日本大震災以降、ミュージシャンやパフォーマーらに焦点を当てた撮影や映像制作を続ける。
2014 年、小説家・古川日出男らが被災地を中心に上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動に密着したドキュメンタリー映画『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』を全国公開。2016 年、七尾旅人が戦死自衛官に扮した初のライブ映像作品『兵士 A』を発表、映画作品としても認められ全国劇場公開。2017 年、飴屋法水と山下澄人の初タッグ公演『コルバトントリ、』の映像作品を監督。2018年、七里圭監督作品『あなたはわたしじゃない』などの「音から作る映画」シリーズに撮影参加。 2020 年、“ろう”の写真家、齋藤陽道の子育てを通じコミュニケーションのあり方にフォーカスしたドキュメンタリー映画『うたのはじまり』が全国公開。2021 年、多様性とファッションをテーマにしたドキュメンタリー作品『True Colors FASHION 対話する衣服-6 組の“当事者”との葛藤-』をオンラインで発表。ニューヨーク・フィルム・アワードにてベストドキュメンタリー作品賞を受賞。2022 年、youtube で発表した映像作品『コロナ時代の銀河』が宮沢賢治奨励賞を受賞。2022 年末、ASIAN KUNG-FU GENERATION のライブフィルム作品を全国映画館で発表。表現者のライブ映像を多数手がける。
松井 至(まつい いたる)
Matsui Itaru
1984 年生まれ、東京都出身。映像作家。 「私だけ聴こえる」令和 4 年度文化庁記録映画大賞受賞 。 HOTDOCS 正式招待。品川宿の人物図絵(品川宿まちづくり協議会) 。
1月19日(日)
13:45~ 米本 直樹
『地獄谷物語 序章』
酒とドキュメンタリーは似ている。
と言うと、怒られるかもしれない。
なくても死にはしない。ないと困るかと言うと、ない方が意外と明るく健康的に生きられる可能性すらある・・・“銘柄”や“分量”によるのか?
これがあるお陰で、なんとかやれている人もいる。なくても死にはしないけど、ないと生きていけない人も、確かにいるだろう。
やめられない、とまらない。
それは、“業”のようなもの。
東京・大森にある「山王小路商店街」、通称「地獄谷」。戦後まもない頃から70年以上続く飲み屋街だ。スクラップ&ビルドを繰り返す街の例に漏れず、ここもまもなく消える。
新陳代謝なのだろう。ボロボロになってはがれてゆく、役目を終えた細胞の側に自分はいる。
だから、この通りを徘徊する、消えゆく”光”を記録に留めることにした。
まだもう少し、時間がかかるだろう。それで序章と名付けた。
地 獄谷のアイドル・ちゃこちゃん
米本 直樹(よねもと なおき)
Yonemoto Naoki
1976年 東京・大森で生まれ育つ。『スター・ウォーズ』に感銘を受け、映像の道を志す。大学で映画研究会に所属しドラマの出演・監督を続けたが、面白い友人を撮ったのをきっかけにドキュメンタリーに転向。NHKを中心に多くの番組を制作している。2017年からドキュ・メメント実行委員長に担ぎ出され、2022年、仲間と映像制作会社ヽヽを立ち上げる。
15:00~ 村津 蘭
『影のまなざし』
西アフリカ・ベナン共和国で使われるフォン語では、霊の存在はイエと呼ばれる。これは影と同じ言葉である。
目に見えない超常的な存在は、影のように人々の日常につきまとう。人間存在とは切り離せない霊/影を、人々はどのように経験するのか。そして、霊/影はどのように人々を見つめるのだろうか。
ベナンにおける目に見えない存在のまなざしを起点に、あり得るかもしれない視点と世界のあり方について考える。
村津 蘭(むらつ らん)
Muratsu Ran
東京外国語大学
アジア・アフリカ言語文化研究所/助教
めくるめく途方もない「現実」に圧倒されながら、それを言葉や映像でどのように理解しうるのか、或いは現し得るのかを人類学の視角から考えています。フィールドは西アフリカの ベナンで宗教がテーマです。ペンテコステ・カリスマ系教会の霊的存在や、妖術師、憑依といった現象に関心があり、テクストや理論を基盤とする従来のアプローチと同時に、フィクションの手法を用いたり、民族誌映画を制作したり様々な方法も検討しています。
16:15~ 関 強
『明日はどこへ?』
中国の若者、彼らの希望、絶望、金、貧乏、暴力とSEXのドキュメンタリー。
関 強(かん きょう)
Guan Qiang
中国・北京生まれ。2008年、大学卒業後に来日。東京造形大学大学院で諏訪敦彦監督の指導を受ける。2013年、テレビ番組制作会社オルタスジャパンに入社。2014年から「中国の今」をテーマに、フジテレビ『NONFIX』の「ボクが見た中国シリーズ」を制作。これまでに「性」、「金」、「夢」、「愛」、「食」をテーマとした5作を制作した。同シリーズの一つ、「風花雪月−ボクが見た祖国・性の解放」で第32回ATP賞テレビグランプリ優秀新人賞を受賞。この他にもTokyo Docs 2017アジアドラマティックTV賞受賞。